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擬岩バックボード(爬虫類用モルタル造形)の作り方
フトアゴヒゲトカゲなど爬虫類の飼育ケージ内を自分好みにレイアウトするのは爬虫類飼育の醍醐味です。
飼育者によって飼育ケージのレイアウトはさまざまですが、僕は飼育ケージのなかに生体の生息環境を再現したレイアウト、いわゆるビバリウム(テラリウム)レイアウトが好みです。
そのビバリウム(テラリウム)レイアウトを作るときに欠かせないアイテムが擬岩バックボード(モルタル造形)です。
擬岩バックボードとはその名の通り岩を模したバックボードのことなのですが、これがあるのとないのとでは飼育ケージ内の雰囲気が別世界のように変わります。
しかし、自分好みの擬岩バックボードは市販されていません。
欲しいものがないなら、作ればいい!
ということで、この記事では爬虫類の飼育ケージに設置する擬岩バックボード(モルタル造形)の作り方をご紹介します。
擬岩バックボード(モルタル造形)の製作例
こちらはこれまでご依頼をいただいてオーダーメイドで製作した擬岩バックボードの製作例です。
この記事で紹介する擬岩バックボードの作り方で作ることができます。
もっと製作例を見たいは「爬虫類用擬岩バックボードのオーダーメイド製作例」をご覧ください。
また爬虫類用の擬岩シェルターも販売中なので、こちらもあわせてご覧ください。
擬岩バックボード(モルタル造形)の材料
擬岩バックボード(モルタル造形)を自作する方法はいろいろとありますが、僕の場合は「スタイロフォーム」と「造形用モルタル」を使って作ります。
- ギルトセメント(造形用モルタル)
- カチオン系モルタル(下塗り用モルタル)
- スタイロフォーム(20〜30mmくらい)
- シリコンシーラント
- シーラー(塗装用)
- テクアートカラー
擬岩バックボード(モルタル造形)の自作手順
「スタイロフォーム」で擬岩バックボードのベースを作ります。
ベースを「スタイロフォーム」にすることで軽量化することができるのと、もともと保温力があるため保温効果にも期待できます。
厚さは20〜30mmくらいが使いやすいのですが、5mmの違いでもかなり使用感が変わります。
20mmだとカットがしやすい反面、モルタルを厚めに塗らないとバックボードが反ってしまいます。30mmだとモルタルを厚塗りしなくても反りにく、少ないモルタルで大きな凹凸を作ることができますが、カットしにくく力が必要になってしまいます。
僕の場合はいろいろと使ってみたて、一番バランスのよかった25mmを使用しています。
まず飼育ケージの内寸を測り10mm(左右5mmずつ)ほど短めにカッターでカットします。
次に高台や岩肌の凹凸を作っていくのですが、細かい作業になるので「スチロールカッター」を使ってカットします。
25mmの「スタイロフォーム 」を使用するため電池式だとパワー不足でスムーズに切れないので、AC電源タイプの「スチロールカッター」がおすすめです。
接着には「シリコンシーラント」を使います。
最終的に流木を設置する予定がある場合は流木をあわせながらベースを作っていきます。
高台や岩の凹凸の場所にマジックでマーキングすると作りやすくなります。
凹凸を作りたい部分はこのように「スタイロフォーム」で隆起させます。「スチロールカッター」を使えばこのような細かいカットも簡単です。
ベースができたら実際に木製ケージに仮設置してみます。
入居予定の生体の性格に合わせて形状を変えるとよりよい飼育環境を作ることができます。
今回入居させるフトアゴヒゲトカゲは高い場所が好きなので高低差をつけて2段の高台を作り、下段はシェルターとしても使えるようにレイアウトしました。
気になる部分はこの段階で微調整し、「シリコンシーラント」が完全に乾燥するまで放置します。
まず「カチオン系モルタル」を下地としてスタイロフォームに塗ります。
下塗りすることで造形用モルタルがとても塗りやすくなりますが、少量で購入することができないのでホームセンターで売っているインスタントセメントでも代用可能です。
広い面はコテを使ったほうが早いですが、高台の部分などは塗る面が狭く塗りにくいので、手で直接塗りたくっていきます。
かなり原始的な光景ですが、これまで何台もバックボードを製作してきた経験上この方法がもっとも効率よくモルタルを塗ることができます。
手袋をしないと手が大変なことになるので要注意!
完全に隙間なく塗る必要はありませんが、造形用モルタルが定着しにくそうな部分にはしっかりと塗ります。
全体的に塗り終えたら完全に乾燥するまで放置します。
もしアクアリウムなど水中で使用する場合はアク抜きをする必要があります。水中に数日間沈めてアク抜きする方法もありますが、コンクリート用の「アク抜き液」を使用するのが手っ取り早くておすすめです。
「造形用モルタル(ギルトセメント)」を塗っていきます。
ギルトセメントにはレギュラータイプとレリーフタイプがあります。
手っ取り早くそれなりの岩っぽさの擬岩を作りたい人にはレギュラータイプ、時間をかけてディテールをしっかり作り込んだ擬岩を作りたい人にはレリーフタイプがおすすめです。
ここでもやはり秘技・手塗りがとても役にたちます。
最初は細かな部分を気にせず大雑把に塗る感じで塗っていきます。
擬岩バックボードはいかに自然の岩肌に近い造形ができるかがポイントになってきますが、コテよりも手塗りのほうが細かい造形も可能なので、よりリアルな擬岩を作ることができます。
シェルターの裏側になる部分は塗りにくい部分なのですが、下地に塗ったカチオン系モルタルのおかげでかなり定着してくれます。
全体的にギルトセメントを塗り終えたらディテールを作りこんでいきます。リアルな岩肌を再現する方法は色々ありますが、今回は金たわしを使いました。
とくに難しいことはしません、金たわしでポンポンするだけです。たったこれだけでもリアルな岩肌を再現することができます。
必要に応じてカッターで亀裂を入れたり、物足りない部分的に凹凸を足したりして理想の岩肌に造形していきます。
凝りはじめるとどれだけ時間があっても足りず、今回は4台同時製作なので丸一日かかってしまいました。
納得いくまで作り込めたらまたまた数日間放置して乾燥を待ちます。
ギルトセメントを数日間放置して完全に乾燥したら着色の準備に入ります。塗料を定着させるために「シーラー」を塗ります。
擬岩は凹凸を激しめにしたのでかなり塗りにくいですが隅から隅までしっかりと塗っていきます。
凹凸が激しい部分に塗るときは刷毛の先で軽く叩くように塗っていくと奥までシーラーを塗ることができます。塗り終えたら十分に乾燥させます。
シーラーが乾いたら着色に突入です。塗料には「テクアートカラー」という水族館や動物園、テーマパークなどの擬岩でも使われている塗料を使用しました。
灰色系の擬岩もリアルでいいのですが、4台並ぶと部屋が暗くなるので4台とも白系の擬岩に統一することにしました。
塗り方はさまざまですが、僕の場合はまずは暗い色を調色して影になりそうな部分に塗っていきます。
上から明るい色を重ねていくので最終的にあまり残りませんが、この工程があるのと無いのとでは仕上がりの奥行き感が全く違ってきます。
次に中間色(薄いベージュ)を全体的に塗っていきます。先ほど塗った濃い色が乾く前に上から塗ることでいい感じに混ざり合ってくれます。
中間色を全体的に塗り終えたらエイジングに入ります。思い描く完成図に近づくように色を重ねていきます。
僕の場合は一度汚した上からハイライトになる部分にホワイトを塗り、また汚してはホワイトを重ねていくという工程を繰り返します。そうするとかなり奥行きのある塗装に仕上がります。
仕上げにハイライトになる部分にホワイトを塗ります。明るめのバックボードにしたいのでやや多めにハイライトを入れました。
塗料は乾燥前と乾燥後でも雰囲気がガラッと変わるので、一晩乾燥させてみてイメージ通りに仕上がっていたら完成です。
擬岩バックボードが完全に乾燥するまで数日間おき、木製ケージに設置して完成です。
擬岩バックボード(モルタル造形)設置例
完成した擬岩バックボードを木製ケージに設置してフトアゴヒゲトカゲたちが入居しました。
擬岩バックボードの有無でここまで飼育ケージの雰囲気が変わります。
思ったとおり、ギドラ氏は早々に高台でくつろぎ始めました(笑)
動画でみる擬岩バックボードの作り方
この記事で紹介したものとは別のゲイリートゲオアガマ用の擬岩バックボードの作り方を、動画版としてYouTubeチャンネルで公開中です。
基本的な作り方は同じですが擬岩シェルターも作っているので、こちらもぜひ参考にしてください。
まとめ
擬岩バックボードの自作はかなり労力のかかる作業です。しかし実際に作ってみると、これまでとは別世界のケージレイアウトを作ることが可能です。
何より自分が作った高台でくつろいでいるフトアゴヒゲトカゲたちをみていると、表現しがたい感動を味わうことができます。
興味のある人はこの記事を参考にぜひ擬岩バックボード作りに挑戦してみてください。