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フトアゴヒゲトカゲの日光浴(バスキング)
野生下のフトアゴヒゲトカゲは太陽の下で日光浴(バスキング)をして過ごしています。
人間も春になると公園で日向ぼっこしたくなり、気持ちよすぎてつい昼寝をしてしまったなんて人もいると思います。
しかし、フトアゴヒゲトカゲの場合はちょっと事情が違います。
彼らは気持ちいいから日光浴をしているだけではなく、生きるために日光浴をしなくてはならない理由があるんです。
縁側のおじいちゃんとは違うんです!
そこでこの記事ではフトアゴヒゲトカゲの日光浴について詳しく解説します。
フトアゴヒゲトカゲが日光浴をする3つの理由
フトアゴヒゲトカゲは太陽光を浴びるために日光浴をします。
この太陽光に含まれる紫外線・可視光線・赤外線の3つがフトアゴヒゲトカゲにとって重要な役割をもっています。
紫外線(UV-A・UV-B)
フトアゴヒゲトカゲなど砂漠に住む爬虫類には強い紫外線が必要です。
紫外線は波長によってUV-A・B・Cの3つに分類され、そのうちUV-AとUV-Bがフトアゴヒゲトカゲに必要な紫外線です。
UV-A(波長:315〜400nm)
フトアゴヒゲトカゲの概日リズム(睡眠と起床のサイクル)の調整、食事や繁殖など日常活動の活性化、視覚(色覚)などに影響するのがUV-Aです。
とくに色覚への影響は大きく、UV-Aがない環境では正常な色覚(フトアゴヒゲトカゲにとってのフルカラー)で見えないため日常活動に支障をきたす場合があります。
UVカット仕様でなければガラスやプラスチックを透過するので、窓越しの日光浴でもUV-Aを浴びることができます。
UV-B(波長:280〜315nm)
フトアゴヒゲトカゲがカルシウムを体内に吸収するために必要なビタミンD3は、UV-Bを浴びることで体内で合成されます。
サプリによるビタミンD3摂取は過剰症による弊害が懸念されますが、日光浴では過剰に合成されないメカニズムになっています。
また皮膚の色素形成や免疫機能を調節したり、ベータエンドルフィンの生成を促し「心地よさ」を感じるともいわれています。
ガラスやプラスチックを透過しないので、窓越しの日光浴ではUV-Bを浴びることができません。
フトアゴヒゲトカゲがどのくらいの紫外線の強さを必要としているかは、UVインデックスとファーガソンゾーンでわかります。
爬虫類に対する紫外線の影響についてもっと詳しく知りたい人は「爬虫類に必要な紫外線の強さ | UVインデックスとファーガソンゾーン」をご覧ください。
可視光線
可視光線はいわゆる日光、光(明るさ)のことを指します。
可視光線が足りないとフトアゴヒゲトカゲの視覚だけでなく、UV-Aと同じく概日リズム(睡眠と起床のサイクル)の調整や日常活動にも影響を及ぼします。
可視光線の明るさの強度はケルビン(K)という単位で表され、日中の太陽光は約5000〜6500Kといわれています。
飼育下においては軽視されがちな可視光線ですが、フトアゴヒゲトカゲの日常活動に直結するため飼育ケージ内の明るさは6500Kを目安に調節しましょう。
赤外線
フトアゴヒゲトカゲなどの爬虫類は変温動物のため、体温調節することができません。
そこで必要になるのが赤外線です。
赤外線による体温調節はフトアゴヒゲトカゲの食欲促進や消化などの日常活動だけでなく、概日リズム(睡眠と起床のサイクル)の調整や創傷治癒・ウィルス感染・寄生虫・脱皮など健康面にも幅広く影響します。
このように紫外線・可視光線・赤外線にはそれぞれ重要な役割があり、フトアゴヒゲトカゲの日常生活や健康のためにはすべてが必要不可欠です。
そして、この3つをまとめて浴びることができるのが太陽光での日光浴なんです。
飼育下では紫外線ライトやバスキングライトで人工的な太陽を作りますが、本物の太陽光とは比べ物にならないため太陽光での日光浴が推奨されています。
フトアゴヒゲトカゲの窓越しの日光浴は意味ある?
前述したように紫外線のうちUV-Aはガラスを透過しますがUV-Bは遮断されてしまうため、フトアゴヒゲトカゲにとって十分な日光浴はできません。
網戸越しでも効果は半減してしまうので、やはりなにも遮断するものがない環境での日光浴が望ましいといえるでしょう。
フトアゴヒゲトカゲの日光浴に適した気温と湿度
フトアゴヒゲトカゲに日光浴をさせるときの外気温の目安は25〜28℃、季節でいうと晩春〜早秋ごろまでが適しています。
外気温が28℃以上のときに日光浴をさせると体温が必要以上に温まったときにクールダウンできず、熱中症になる恐れがあるので要注意です。
とくにベビー〜ヤングアダルトの熱中症はかなり危険なので、こまめに気温チェックをしてください。
また温度だけでなく必ず湿度もチェックし、湿度65%以上のときは日光浴を控えましょう。
日本は梅雨〜夏にかけて湿度が高く、とくに雨あがりはかなりの高湿度になります。
フトアゴヒゲトカゲの推奨湿度は30〜40%とされています。
日光浴時に限らず飼育ケージ内の高湿度も細菌感染症や呼吸器疾患を引き起こす恐れがあるため、必ず湿度計でチェックしましょう。
「フトアゴヒゲトカゲの温度と湿度 | 生息地オーストラリアの気候」ではフトアゴヒゲトカゲに適した温度と湿度をより詳しく解説しています。
フトアゴヒゲトカゲに日光浴させる時間帯
フトアゴヒゲトカゲに日光浴をさせる時間帯は午前中がおすすめです。
季節によって多少時間帯を調整する必要はありますが、昼間に温度が上昇しすぎる真夏でも午前中の早い時間帯であれば良質な紫外線を浴びさせることができます。
フトアゴヒゲトカゲに日光浴をさせる場所
飼育下では公園、庭やベランダなどで日光浴をさせることになります。
公園で日光浴をさせるときは脱走防止のため必ず「フトアゴヒゲトカゲ用ハーネス」を着用させましょう。
庭やベランダで日光浴をさせるときは脱走防止だけでなく、鳥や猫などの外敵からも守ることができる日光浴ケージの使用をおすすめします。
ただ、フトアゴヒゲトカゲの活動範囲が制限されてしまい逃げ場がなくなるなどのデメリットもあります。
フトアゴヒゲトカゲの日光浴ケージの作り方
我が家では以前、写真のようなワイヤーメッシュで自作した日光浴ケージを使用していました。
材料はダイソーやセリアなどですべて揃えることができ、DIY初心者でも簡単に作ることができるためブログでもおすすめしていたのですが、諸事情により現在はおすすめしていません。
その諸事情というのがこちら。
目の下に黒いアザがあるのですが、これはワイヤーメッシュの隙間から執拗に脱出を試みたときにできたものです。
再発防止のため日光浴ケージの設計を見直し、現在はメタルラックをベースにした日光浴ケージ(五号機)を使用しています。
風通しもよく気温勾配・紫外線勾配をつけることができる十分なスペースがあるため、最強の日光浴ケージだと自負しています(笑)
- メタルラック(900mm×450mm)
- 人工芝(ダイソー)
- 金網(ホームセンターで購入)
- すだれ
- SPF材(扉用)
- 蝶番
- パッチン錠
メタルラックは基礎がしっかりしているため、据え置きできるスペースがあるならとてもおすすめです。
爬虫類の日光浴ケージの作り方にこれといった決まりはありませんが、どんな日光浴ケージを自作するにせよ次にあげるポイントだけは必ず押さえるようにしましょう。
シェルターで日陰を作る
野生下のフトアゴヒゲトカゲは体温が十分に温まったり、紫外線が強すぎると日陰やクールスポットに移動して熱中症や紫外線の浴びすぎを回避することができます。
日光浴ケージを使用する場合も必ずケージ内にシェルターで日陰を作り気温勾配と紫外線勾配をつけ、フトアゴヒゲトカゲが自分で調節できる環境を作りましょう。
風通しをよくする
日光浴ケージをはできるだけ風通しのよい構造のものを使用しましょう。
そうすることで日陰の温度を効率よく下げることができ、より大きな気温勾配をつけることができます。
たまにプラスチックケースで日光浴をさせている飼育者を見かけますが、空気がこもって高温多湿になるため個人的にはおすすめしません。
地面に直置きしない
日光浴ケージを地面に直置きすると、気温以上に高温になる場合があります。
とくに真夏のコンクリートはかなり蓄熱するので、必ず日光浴ケージと地面の間に空間を作るなどの対策をしましょう。
フトアゴヒゲトカゲに日光浴をさせるときの注意点
目を離さない
フトアゴヒゲトカゲの日光浴中は絶対に目を離さないようにしましょう。
とくにフトアゴヒゲトカゲにとって外敵となる動物(カラスや猫など)はいつどのタイミングで襲ってくるかわかりません。
日光浴ケージを使用していたとしても、カラスやトンビが相手だと日光浴ケージごと持っていかれる恐れもあります。
とにかく日光浴中は一瞬たりとも目を離さないように注意しましょう。
気温・湿度をこまめにチェックする
太陽光のエネルギーは凄まじく、雲が晴れて日光の差し込み加減が少し変わるだけで急激に温度が上昇することがあります。
気温や湿度が上がってしまうとフトアゴヒゲトカゲの逃げ場がなくなるため、日光浴中はこまめに気温と湿度をチェックしましょう。
温湿度計はデジタルのものがわかりやすくておすすめです。
水入れを置いておく
日光浴中は近くに水入れを置いておくことでフトアゴヒゲトカゲが水分補給したり、水浴びすることができます。
水浴びが好きな個体も多いので、少し深めの水入れがおすすめです。
フトアゴヒゲトカゲをよく観察する
日光浴中はフトアゴヒゲトカゲの様子をよく観察し、異常はないかチェックしておきましょう。
ずっと日陰に隠れていたり、ずっと水に浸かっていたり、日光浴ケージから外に出ようとするときは必要以上に高温になっている可能性があります。
その場合は日光浴を中止して飼育ケージに戻してあげましょう。
フトアゴヒゲトカゲに日光浴をさせる長さと頻度
適切な気温・湿度で気温勾配・紫外線勾配があり、フトアゴヒゲトカゲの逃げ場となるシェルターや日陰がある環境で、飼育者が目を離さずにずっと見ていられるのであれば何時間でも日光浴して問題はないでしょう。
しかし、日本の環境では難しいのが現実です。
日光浴は15〜30分でも効果はあるといわれているので、短時間でもできるときは積極的に日光浴をさせてあげるのがベターだと考えます。
ちなみに我が家では、晩春〜早秋にかけて週2〜3回は短時間でも必ず日光浴をさせています。
まとめ
フトアゴヒゲトカゲにとって日光浴(バスキングは)は生きるために必要不可欠な行動です。
飼育ケージ内の人工太陽を補助する意味でも、フトアゴヒゲトカゲには積極的に太陽光での日光浴をさせてあげましょう。