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爬虫類に必要な紫外線の強さ | UVインデックスとファーガソンゾーン
フトアゴヒゲトカゲなどの爬虫類は、日光浴で紫外線を浴びる必要があります。
そのため飼育ケージ内には紫外線ライトを設置して人工的な太陽光を再現するわけですが、どれくらいの強さの紫外線が必要かご存じでしょうか?
わからん!
爬虫類が必要とする紫外線の強さは種によってさまざまで、不足しても過剰でも健康を害するリスクがあります。
では一体どうすればいいのか…。
そんなときにとても参考になる指標がUVインデックスとファーガソンゾーンです。
なにそれ!?
そこでこの記事では、爬虫類に必要な紫外線の強さの指標である「UVインデックス(UVI)」と「ファーガソンゾーン」について詳しく解説します。
爬虫類に紫外線(UV-AとUV-B)が必要な理由
爬虫類に限らず多くの動物は日光浴によって紫外線を浴びます。
紫外線は波長によってUV-A・UV-B・UV-Cの3つに分類され、そのうちUV-AとUV-Bが爬虫類に必要な紫外線です。
UV-A(波長:約315〜400nm)
概日リズム(睡眠と起床のサイクル)の調整、食事や繁殖など日常活動の活性化、視覚(色覚)などに影響するのがUV-Aです。
そのなかでも注目しておきたいのが色覚への影響です。
4色型色覚の爬虫類は赤・緑・青に加えてUV-Aも認識し、3色型色覚の人間よりも広い色覚をもっています。
そのためUV-Aがない環境では本来の色(爬虫類にとってのフルカラー)を認識できず、日常活動にさまざまな影響を及ぼします。
この動画はニンジンとカボチャを同じ形にスライスして、フトアゴヒゲトカゲに与えたときの様子です。
人間の目にはほとんど同じ色に見えるので、さすがに判別はできないだろうと思っていたのですが…。
完全に大好きなカボチャだけを選んで食べています。
別の日には葉野菜と野草のミックスから野草だけを選んで食べることがあり、色によって餌の種類を識別していることがわかりました。
また一部の爬虫類や餌となる昆虫・植物はUV-Aを反射する独特な柄や模様をもち、それらを目視によって識別していることも知られています。
このように爬虫類にとって色覚は日常活動に大きく影響するため、飼育下でのUV-A照射は必須といえるでしょう。
UV-B(波長:約280〜315nm)
爬虫類がカルシウムを体内に吸収するために必要な「ビタミンD3」は、UV-Bを浴びることで体内で合成されます。
どんなに餌やサプリでカルシウムを摂取してもビタミンD3がないとカルシウムを吸収できず、クル病などの代謝性骨疾患を引き起こす恐れがあります。
サプリによるビタミンD3摂取は過剰症による弊害が懸念されますが、日光浴では過剰に合成されないメカニズムになっています。
そのほかにも皮膚の色素形成や免疫機能を調節したり、ベータエンドルフィンの生成を促し「心地よさ」を感じるともいわれているため、飼育下でのUV-B照射は必須といえるでしょう。
UV-C(波長:約100〜280nm)
爬虫類とって有害なのがUV-Cです。
一般的には殺菌や消臭などにも用いられることで知られていますが、太陽光に含まれるUV-Cはオゾンと酸素分子によってすべて吸収されるため地表には届きません。
紫外線ライトについて
飼育下ではUV-AとUV-Bを照射するために爬虫類用の紫外線ライトを設置します。
UV-Bライトと称して販売されている紫外線ライトの多くはUV-Aも照射し、メタハラのように赤外線(熱)までまとめて照射するものもあります。
ひとつ注意しておきたいのが設置方法です。
こちらの写真はメタハラのUVインデックスを計測したときの写真です。
UVインデックスはメッシュ越しで半減し、ガラス越しだとほとんど遮断されてしまいました。(※UVインデックスについては後述します)
またUV-Bはガラスやプラスチックを透過しないため、紫外線ライトは必ず遮断物がない状態で設置しましょう。
UVインデックスとは?
紫外線が人体に及ぼす影響の度合いを指標化したものがUVインデックス(UVI) です。
本来は人体に有害な波長(日焼けにつながる波長)をもとに作られた指標なのですが、ビタミンD3を効果的に合成する波長とほぼ一致していることがわかっています。
つまり、UVインデックスが爬虫類にとって必要な紫外線の強さの目安になるということです。
UVインデックスは世界共通の指標のため、例えばフトアゴヒゲトカゲが生息する地域でUVインデックスを測定すれば、野生下でどのくらいの強さの紫外線を浴びているかを知ることができます。
そして飼育ケージの紫外線ライトのUVインデックスを現地にあわせれば、生息地に近い環境を構築することができるんです!
とはいえ、さすがにUVインデックスを測定するためだけに飼っている爬虫類の生息地まで行くのは大変すぎます。
代わりに行ってくれる神様みたいな人おらんかな…。
と思っていたら、ファーガソン教授という神様が存在していました。
ファーガソンゾーンとは?
ファーガソン教授は爬虫類が本来どれくらい自発的に日光浴をしているかを研究し、それぞれの種が必要とする紫外線の強さによって4つのゾーンに分類し「ファーガソンゾーン」なるものを作りました。
ゾーン分類 | 平均UVIの範囲 | 最大UVIの範囲 |
---|---|---|
ゾーン1 | 0~0.7 | 0.6~1.4 |
ゾーン2 | 0.7~1.0 | 1.1~3.0 |
ゾーン3 | 1.0~2.6 | 2.9~7.4 |
ゾーン4 | 2.6~3.5 | 4.5~9.5 |
平均UVIの範囲
該当する爬虫類が生息する地域全体のUVIを測定し、それを平均した数値の範囲です。
最大UVIの範囲
該当する爬虫類が生息する地域内でもっとも高かったUVIの測定値の範囲です。この数値は1日のなかでの最高値(正午の太陽直下)となるため、1日中この数値を保っているわけではありません。
当初は15種類の爬虫類のみでしたが、BIAZA(英国・アイルランドの動物園水族館協会)によってアップデートされ現在は254種類の爬虫類が「ファーガソンゾーン」で分類されています。
下記表は「Journal of Zoo and Aquarium Research」からゾーンごとに主な爬虫類を抜粋し、それぞれ推奨される紫外線照射方法をまとめたものです。
ゾーン分類 | 主な爬虫類 | シェードメソッドUVI | サンビームメソッドUVI | 照射方法 |
---|---|---|---|---|
ゾーン1 | クレステッドゲッコー レオパードゲッコー トッケイヤモリ ビルマニシキヘビ ミドリニシキヘビ ミルクヘビ アミメニシキヘビ | 0〜0.7 | — | シェードメソッド |
ゾーン1〜2の中間 | ヒロオビフィジーイグアナ コーンスネーク カーペットニシキヘビ | 0〜0.7 | — | シェードメソッド |
ゾーン2 | ヒガシウォータードラゴン エメラルドツリーモニター グリーンアノール オマキトカゲ カレハカメレオン ピグミーカメレオン キタニシキハコガメ アカアシガメ ボアコンストリクター ホソツラナメラ ガータースネーク セイブシシバナヘビ | 0〜1.0 | 1.1〜3.0 | シェードメソッド or サンビームメソッド |
ゾーン2〜3の中間 | アオジタトカゲ インドシナウォータードラゴン パンサーカメレオン ミシシッピニオイガメ | — | 1.1〜3.0 | サンビームメソッド |
ゾーン3 | テグー エリマキトカゲ スタンディングヒルヤモリ エボシカメレオン インドホシガメ ヒョウモンガメ キボシイシガメ カーペットニシキヘビ | — | 2.9〜7.4 | サンビームメソッド |
ゾーン3〜4の中間 | フトアゴヒゲトカゲ サバンナモニター グリーンイグアナ ニシキガメ ミシシッピアカミミガメ ケヅメリクガメ | — | 2.9〜7.4 | サンビームメソッド |
ゾーン4 | チャクワラ トゲオアガマ サイイグアナ テキサスツノトカゲ | — | 4.5〜8.0 | サンビームメソッド |
「Journal of Zoo and Aquarium Research」ではゾーンによって2つの紫外線照射方法が推奨されています。
シェードメソッド
シェードメソッドはレオパードゲッコーなどの低レベルの紫外線しか必要としない爬虫類に推奨される紫外線照射方法です。
シェードメソッドUVIの数値を目安に飼育ケージ全体にUVIグラデーションができるように紫外線を照射します。
サンビームメソッド
サンビームメソッドはトゲオアガマなどの強い紫外線を必要とする爬虫類に推奨される紫外線照射方法です。
サンビームメソッドUVIの数値を目安に飼育ケージ全体にUVI:最大値(バスキングゾーン)〜UVI:0(日陰)のUVIグラデーションを作ります。
また太陽光と紫外線ライトの紫外線スペクトルは異なるため、ゾーン4のUVI最大値(バスキングゾーンのUVI)は7.0〜8.0を限度とすることが推奨されています。
爬虫類に必要な紫外線の強さ(UVI)の計測方法
爬虫類に必要な紫外線の強さ(UVインデックス)を正確に測定するには「Solarmeter 6.5」を使用します。
そもそもファーガソンゾーンはこのSolarmeter 6.5の測定値をもとに作られているので、これ以上の測定器はありません。
実際にいくつかUVインデックスの測定器を使用してみましたが、そこそこ高価なものでもSolarmeter 6.5の数値と一致するものはありませんでした。
我が家では爬虫類に最高の飼育環境を提供して長生きしてもらいたい!という思いから導入しましたが、ぶっちゃけかなり高額なのでお財布と相談しながら検討してください。
まとめ
爬虫類に必要な紫外線の強さの目安となるUVインデックスとファーガソンゾーンは、爬虫類飼育においてとても有益な情報です。
UVインデックスを飼育ケージ内に再現するには正確な測定器が必要になりますが、爬虫類の健康を考えると必要経費だと思います。
UVインデックスとファーガソンゾーンを活用し、少しでも爬虫類が快適に過ごせる飼育環境を構築してあげましょう。