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フトアゴヒゲトカゲの飼育方法 | 初心者も安心の飼い方ガイド
フトアゴヒゲトカゲは爬虫類のなかでも飼いやすい種類なので、適切な飼育環境で正しい飼い方をすれば初心者でも安心して飼うことができます。
とはいっても、初めて爬虫類を飼育する初心者にとっては不安や心配だらけ。
その気持ち、分かります…
我が家ではこれまで4匹のフトアゴヒゲトカゲを飼育してきましたが、初めてお迎えしたときはただ寝ているだけのギドラ氏が死んだのではないかと心配になり夜中に突っついて生存確認していました(笑)
迷惑!
そこでこの記事では、フトアゴヒゲトカゲの飼育方法を爬虫類初心者にもわかるように詳しく解説します。
フトアゴヒゲトカゲの生態・特徴
学名 | Pogona vitticeps |
英名 | Bearded dragon |
分布 | オーストラリア中央部〜南東部 |
フトアゴヒゲトカゲは主にオーストラリア中央部〜南東部(ノーザンテリトリー・クイーンズランド・南オーストラリア・ニューサウスウェールズ・ビクトリア)あたりに生息するアガマ科のトカゲです。
その名の通りアゴのヒゲが特徴的で、とても鋭い目つきですがつぶらな目をしているので正面から見るとなんともいえない可愛さがあります。
ヴィティキンスドラゴン、ヒガシアゴヒゲトカゲ、ニシアゴヒゲトカゲ、ササメアゴヒゲトカゲ 、ヒメアゴヒゲトカゲ、ミッチェルアゴヒゲトカゲ、ナラーボーアゴヒゲトカゲ など
フトアゴヒゲトカゲは昼行性で、野生下では日当たりのよい岩場などで日光浴(バスキング)をする姿がよく目撃されます。
主に地上で生活していますが、岩場や樹木など高いところに登ったり天敵から隠れるために地中に巣穴を掘ったりもしています。
体長と体重
フトアゴヒゲトカゲの体長(頭から尻尾の先まで)はベビーで7〜8cm、アダルトで40〜60cmくらいになります。
生後12カ月でほぼフルアダルトサイズまで成長するのですが、ベビーからヤングアダルトまでの成長速度は凄まじくあっという間に大きくなります。
目安体重は健康なフルアダルト個体で380〜510gです。
飼育下のフトアゴヒゲトカゲは豊富な栄養と運動不足で肥満になりやすいため、体調管理のためにも定期的な体重チェックを推奨します。
寿命
フトアゴヒゲトカゲの寿命は飼育環境・飼育方法・モルフなどで変わるため一概にはいえませんが、適切な飼育環境下で7〜12年といわれています。
日本では3〜4年で亡くなってしまうことも多く原因不明の短命化といわれていますが、個人的には不適切な飼育方法に起因する短命化なのではないかと考えています。
少しでも長生きしてもらうためにも、適切な飼育環境作り・適切な飼育方法・適切な給餌を心がけましょう。
我が家にいたどんぐり氏の死亡原因は腸にできた腫瘍でした。フトアゴヒゲトカゲはほかの爬虫類にくらべて腫瘍ができる割合が非常に高く、その原因も明確にはなっていないそうです。
モルフ(種類)
フトアゴヒゲトカゲは肌の質感・カラー・爪の透明感・柄など、まざまなモルフ(種類)が存在します。
- ノーマル
- レザーバック
- シルクバック
- トランスルーセント
- ハイポ
- リューシスティック
- ウィットブリッツ
- ゼロ
- ダナー など
現在進行形で品種改良が進んでいて、どんどん新しいモルフが誕生しています。
フトアゴヒゲトカゲのモルフについてもっと詳しく知りたい人は「フトアゴヒゲトカゲのモルフ(種類)」をご覧ください。
意思を推測できる行動
フトアゴヒゲトカゲなどの爬虫類は言葉や鳴き声を発しないため、考えていることや心境を推測するのが難しい生き物です。
しかし、いくつかの行動からは意思を推測することができます。
それがボビングとアームウェービングです。
フトアゴヒゲトカゲがアゴを黒して膨らませ上下に動かす行動をボビングと呼び、シチュエーションによって3種類を使いわけます。
ボビングについては「フトアゴヒゲトカゲのボビング | 彼らがボビる3つの理由」で詳しく解説しています。
フトアゴヒゲトカゲがゆっくりと手を振る行動をアームウェービングと呼び、シチュエーションによって4種類を使いわけます。
アームウェービングについては「フトアゴヒゲトカゲのアームウェービング | 彼らが手を振る4つの理由」で詳しく解説しています。
フトアゴはなつく?
これまで4匹のフトアゴヒゲトカゲを飼育した経験からいうと、フトアゴヒゲトカゲは人になつきません。
ただ、人に慣れることはあります。すべてのフトアゴヒゲトカゲが人に慣れるというわけでもなく、もともとの性格や飼育環境、飼育方法なども影響します。
フトアゴヒゲトカゲのハンドリングについて詳しく知りたい人は「フトアゴヒゲトカゲはなつく?正しいハンドリングと人慣れしやすい育て方」をご覧ください。
フトアゴヒゲトカゲの飼育に必要なもの
自宅にフトアゴヒゲトカゲが住める飼育環境を構築するためには、さまざまな飼育用品を揃える必要があります。
- 飼育ケージ
- 紫外線ライト
- 紫外線チェッカー※なくても可
- バスキングライト
- バスキングストーン
- 保温器具
- サーモスタット(タイマー付)
- 温度計
- 湿度計
- サーモチェッカー
- 床材
- 餌入れ・水入れ
- シェルター(隠れ家)
- 流木(高台)※なくても可
- バックボード※なくても可
- ハーネス※なくても可
基本的に上記リストのものがあればフトアゴヒゲトカゲを飼育することができます。
リストだけをみると爬虫類を飼育したことがない初心者にはハードルが高そうに感じますが、「何のために必要なものなのか」を1つずつ理解しながら整理すればそう難しくはありません。
それぞれの役割やおすすめの飼育用品については「フトアゴヒゲトカゲの飼育に必要なもの | 正しい選び方とおすすめ飼育用品」で詳しく解説しています。
フトアゴヒゲトカゲの飼育環境づくり
フトアゴヒゲトカゲをお迎えする前に、飼育ケージ内に適切な飼育環境を構築しましょう。
飼育環境の構築にあたりやるべきことは4つあります。
- ケージレイアウト
- 日照時間の設定
- 温度の設定
- 湿度の設定
1つずつ順番に解説していきます。
ケージレイアウト
まずは機材やレイアウト用品を使って飼育ケージ内のレイアウトを作っていきます。
ここで重要なのが紫外線勾配と温度勾配をつけ、高紫外線・高温度のバスキングスポットと紫外線が当たらない低温エリアがあるレイアウトを作ることです。
フトアゴヒゲトカゲに必要な紫外線の強さ
フトアゴヒゲトカゲが必要とする紫外線の強さは、UVインデックス(UVI)とファーガソンゾーンを目安に判断できます。
フトアゴヒゲトカゲはファーガソンゾーン3〜4に分類されていて、飼育ケージ内にはUVI:2.9~7.4(バスキングゾーン)〜UVI:0(日陰)のUVIグラデーションを作るのが理想的だといわれています。
紫外線の浴びすぎによるさまざまな弊害を避けるため、飼育ケージ内には必ず紫外線勾配をつけましょう。
とくに広範囲に紫外線を照射できる直管型の紫外線ライトを使用する場合は、飼育ケージ幅の1/2〜2/3程度のサイズを使用し必ず紫外線勾配をつけてください。
またシェルターや流木をレイアウトしてUVIが0に近い日陰や立体的な勾配つけることで、より野生下に近い快適な環境を作ることができます。
飼育ケージ内に流木設置をおすすめする理由やレイアウト方法などは「フトアゴヒゲトカゲの流木レイアウト」で詳しく解説しています。
飼育ケージのうえから紫外線ライトを照射する場合、メッシュ越しやガラス越しだと紫外線を遮ってしまいます。
強力な紫外線を照射するメタハラでもメッシュによって2/3程度まで低下してしまうので、できるだけ遮断物のない状態での設置をおすすめします。
UVインデックスとファーガソンゾーンについてもっと詳しく知りたい人は「爬虫類に必要な紫外線の強さ | UVインデックスとファーガソンゾーン」をご覧ください。
日照時間の設定
飼育ケージ内の日照時間は紫外線ライトとバスキングライトの点灯・消灯でコントロールします。手動で管理することもできますが、温度も管理できるタイマー付のサーモスタットがおすすめです。
10〜14時間を目安に季節によって日照時間を変えることで、より自然に近い環境を飼育ケージ内に再現することができます。
季節 | ライト点灯時間 |
---|---|
春 | 12時間 |
夏 | 14時間 |
秋 | 12時間 |
冬 | 10時間 |
温度の設定
バスキングスポット | 42〜45℃(表面温度) |
温度(気温)勾配 | 22〜37℃ |
夜間の温度 | 20〜25℃ |
バスキングスポット
日中のフトアゴヒゲトカゲは体を適正体温(36.3℃)まで温めるために日当たりのよい岩場などでバスキング(日光浴)をします。
適正体温(36.3℃)まで体を温めるにはバスキングスポットの表面温度を42〜45℃くらいまで上げる必要があります。
表面温度はサーモチェッカーで測りながらバスキングライトのワット数や照射距離で調節しましょう。
温度(気温)勾配
飼育ケージ内には22〜37℃の温度(気温)勾配があるのが理想的です。
バスキングスポットがある側を高温部、その反対を低温部として気温がグラデーションになるように調節しましょう。
夜間の温度
夜間は20〜25℃を目安にし、冬場など20℃よりも下がりそうであれば保温球などで保温する必要があります。
またベビーや体調を崩しているフトアゴヒゲトカゲの場合は、25℃くらいを保つようにしておくと安心です。
健康的なフトアゴヒゲトカゲで日中に適正体温までバスキングできていれば20℃を下回っても耐えられますが、夜間温度が15℃を下回ると冬眠モードに突入してしまいます。
湿度(相対湿度)の設定
日中 | 30〜40% |
夜間 | 40〜60% |
フトアゴヒゲトカゲは乾燥した砂漠に住むトカゲなので、「乾燥に強く飼育ケージ内の湿度は気にしなくても問題ない」という飼育者もいるようですが、これは大きな間違いです。
フトアゴヒゲトカゲが住む砂漠では、日なたは乾燥していますが日陰や岩の隙間などは湿度が高くなります。
また夜間は気温の低下とともに全体的に湿度が上がり、フトアゴヒゲトカゲが寝床にしているような岩の隙間や土のなかは高湿度を保っています。
フトアゴヒゲトカゲの理想的な相対湿度は日中30〜40%・夜間40〜60%で、飼育ケージ内に湿度勾配をつけることができればよりよい環境といえるでしょう。
適切な相対湿度を保てていれば高温部は乾燥し、低温部は湿度が高くなり自然に湿度勾配が生まれます。
飼育ケージ内全体の湿度が30%を下回る環境で飼育を続けると、脱水症や呼吸器などにダメージを与えてしまう恐れがあります。とくに乾燥しやすい冬は飼育ケージ内の湿度管理を徹底しましょう。
逆に飼育ケージ全体が60%以上になるような高湿度も危険なので、湿度計でこまめにチェックしながら換気するなどして理想の湿度を保てるように調節してください。
湿度管理についてもっと詳しく知りたい人は「フトアゴヒゲトカゲの温度と湿度 | 生息地オーストラリアの気候」をご覧ください。
フトアゴヒゲトカゲの餌
フトアゴヒゲトカゲは雑食で餌昆虫と野菜を中心に与えます。
成長ステージによって与える餌の割合を変える必要があるので、下記表を参考に給餌メニューを考えましょう。
餌昆虫 | 野菜 | 昆虫:野菜の割合 | |
---|---|---|---|
ベビー | 毎日2回 | 毎日 | 80%:20% |
ヤングアダルト | 毎日1回 | 毎日 | 50%:50% |
アダルト | 週1〜2回 | 毎日〜週3、4回 | 20%:80% |
アダルト以降の動物性タンパク質の与えすぎにはとくに注意が必要です。
可愛さのあまり昆虫を与えすぎると、肥満だけでなく腎不全・尿酸結石など治すことが難しい病気になってしまう恐れもあります。
とくにアダルト以降は、野菜中心の低タンパク・低カロリー・高食物繊維を意識したバランスの良い給餌を心がけましょう。
フトアゴヒゲトカゲに与えてもよい餌の種類や、量や頻度などの正しい与え方は「フトアゴヒゲトカゲの餌」で詳しく解説しています。
フトアゴヒゲトカゲのお迎え
フトアゴヒゲトカゲは爬虫類ショップやホームセンターのペットコーナー、爬虫類イベントでお迎えすることができます。
爬虫類に詳しいスタッフがいないホームセンターだと生体が衰弱していることもあるので、爬虫類ショップでのお迎えがおすすめです。
フトアゴヒゲトカゲの飼育でもっとも難しいといわれるのが生後3カ月までのベビーの飼育です。巷では魔の3カ月といわれているとかいないとか。
実際に爬虫類ショップでベビーを見ると可愛くてついお迎えしたくなってしまいますが、フトアゴ初心者は極力ベビーのお迎えは避けてください。
フトアゴヒゲトカゲの日光浴(バスキング)
本来、太陽下で紫外線を浴びて生活しているフトアゴヒゲトカゲにとって日光浴(バスキング)はとても重要です。
飼育ケージ内に紫外線ライトとバスキングライト を設置することで人工的に太陽を作り出してはいますが、本物の太陽にはかないません。
短時間でもその効果は絶大なので、晩春〜早秋にかけては積極的に日光浴をさせましょう。
フトアゴヒゲトカゲに日光浴が必要な理由や正しいさせ方は「フトアゴヒゲトカゲの日光浴(バスキング)」で詳しく解説しています。
フトアゴヒゲトカゲの爪切り
フトアゴヒゲトカゲの爪が伸びすぎたままにしておくと、つま先が左右に傾いてしまい歩行や木登りに支障がでます。
ハンドリングするときに飼育者の肌を傷つけてしまう恐れもあるため、定期的な爪切りをおすすめします。
フトアゴヒゲトカゲの爪切りについて詳しく知りたい人は「フトアゴヒゲトカゲの爪の切り方 | 伸びすぎや爪飛びの対処方法」をご覧ください。
フトアゴヒゲトカゲの温浴
フトアゴヒゲトカゲを温浴させることで、体の洗浄や水分補給・脱皮補助などの効果があります。
必須ではありませんが、フトアゴヒゲトカゲが嫌がらないのであれば週2〜3回程度の温浴をおすすめします。
僕の経験上、フトアゴヒゲトカゲは温浴(水浴び)が好きな傾向がありますが、嫌がってストレスを与えてしまう場合もあるので性格によって温浴するかしないかを決めてください。
フトアゴヒゲトカゲに温浴をさせる理由や正しいやり方は「フトアゴヒゲトカゲの温浴」で詳しく解説しています。
フトアゴヒゲトカゲの飼育にかかる費用
飼育セット費用
導入するセット内容にもよりますが、良い環境を作ろうと思うと細かな物を含め¥40,000〜¥70,000くらいかかると考えておいた方がよいでしょう。
生体費用
数千円〜数十万まで、大きさや種類(モルフ)によってかなり値段にばらつきがあります。
目安としてはベビーで¥6,000〜¥30,000くらい(稀少種除く)が相場のようです。生体が成長するほど値段が上がる傾向がありますが、最近はベビーから飼いたい人も多く一概にはいえないようです。
電気代
飼育環境や季節によって変わりますが、大体月¥1,000〜¥2,000(1セットあたり)ほど上がるイメージです。
餌代
ベビー〜ヤングアダルトの成長期は毎日コオロギやデュビアを与える必要があるので、野菜やフードを含めると¥3,000〜¥5,000(1匹)はかかります。
診察費用
怪我や病気になった時は動物病院での診察費用がかかります。また生後半年くらいになったら寄生虫検査含めて健康診断をしておくと安心です。
まとめ
フトアゴヒゲトカゲは爬虫類のなかでも飼育しやすく、爬虫類ショップの在庫も豊富なため初心者にも人気のトカゲです。
しかし、適切な飼育環境を準備し正しい飼い方で毎日の世話をできないのであれば飼育はできません。
飼育しやすいからと中途半端な気持ちで飼うのは絶対にやめましょう。
またこの記事で紹介しているフトアゴヒゲトカゲの飼育方法は随時アップデートしていくので、ブックマークしてこまめにチェックしてもらえると幸いです。